未来:白の世界

白の世界

Illust. 碧風羽

[ 2015.04.02 掲載 ]

状況

 資源の奪い合いから世界各地で紛争が勃発し、人々の心に暗い影を落とした未来では「人類が物質に固執するのは肉体に囚われているためであり、精神力を高め肉体からの脱皮を果たす必要がある」「神から遣わされた天使が人類を救済する」という教えを説いた南米アルゼンチン発祥の新興宗教団体《ペンドラゴン使徒教会》が貧困層の支持を集め、勢力を拡大しつつあった。

 やがて最初のエンジェル《ウリエルA.T.》が出現するとペンドラゴン使徒教会は貧困層だけでなく市民層の支持も集めるようになり、その信者は爆発的に増えてゆく。
 特に選挙制度がある国家では圧倒的な影響力を及ぼすようになり、もはや世界規模にまたがって台頭する、国家の枠を超越した一大勢力であった。

 高位のエンジェルは精神力の高い人間を感じ、エンジェル化へと導く力を有している。
 最初にウリエルは最も精神力の高い3人の人間を見出すと、エンジェル化した。
 次に4人のエンジェルがそれぞれ3人の人間を見出すと、新たなエンジェルへと導いた。
 これが四大天使と十二使徒である。

 エンジェルが新たな人類として君臨し、世界人口の6分の1を占めるようになった頃――
 ウリエルの指導によって世界は十二使徒が管理する12の地域に分けられ、四大天使を頂点としたピラミッド型の階級社会が形成された。
 エンジェルとは異なる形で精神力を高め進化し、人口の6分の2を占めるガーディアンも、階級社会から逃れることはできなかった。

 ブラックポイントの発生した現代においては、四大天使の内、ウリエルとミカエルは異世界との抗争のため前線に赴き、ラファエルは行方不明である。
 そのためガブリエルがウリエルの摂政として白の世界の全権を握っている。
 四大天使の中で最も急進派であるガブリエルがトップに立ったことで、精神力が低くエンジェル化できない人間たちはケット・シー以下の扱いを受けているようだ。

神話

 これは遥か遠い遠い未来のお話。

 ある時、四大天使のひとり、ガブリエルは精神力の低い人間たちの抹殺を掲げ、四大天使の長ウリエルに対して反乱を起こしました。

 ガブリエルは自らに仕える三人の十二使徒に加え、ウリエルによって封印されていた十二使徒をも上回る力を持つ危険なエンジェルたちを解放し、白の世界を二分する天使たちの最終戦争《ハルマゲドン》を引き起こしました。

 ガブリエルの軍勢には一組のガーディアン夫婦がおりました。
 戦いが激化する中、愛し合うふたりは、ひとりの可愛い女の子を授かります。
 しかし、その女の子は抹殺の対象である、ただの人間だったのです。

 その事実はガブリエルに仕える、十二使徒 宝瓶宮ガムビエルに知られることとなってしまいました。
 宝瓶宮ガムビエルの魔の手が迫ります。

 ふたりは掛け替えのない我が子を守るために追っ手と戦い、敵方の将であるウリエルの元へ逃れようとしました。

 しかし、ウリエル側の勢力圏内を目前にして――
 親子を追って来た十二使徒 磨羯宮ハナエルの圧倒的な力の前に、ふたりをかばった父親は命を落としてしまいます。

 悲しみにくれる母親は瀕死の重傷を負いながらも、もうひとりの四大天使ミカエルに助けられ、ウリエルの元へ辿り着きました。
 そして、ウリエルの能力で娘を、まだ人間たちが幸せに暮らしていた遠い過去へ送るよう懇願したのです。

 ウリエルは母親に告げました。
 悲運の星の下に生まれたその女の子を、過去へ送ることは可能であると。
 同時に、タイムトラベルは生まれたばかりの女の子から視力や聴力を奪うような重大な副作用を引き起こす可能性が高い、とも。

 それでもガーディアンの母親の決意は変わりませんでした。

 母親によって《mi-saki》と名づけられた幼い娘は、ウリエルの手で時空の狭間へ旅立って行きました。
 誰からも愛される女の子に育って欲しいという、母親の切なる祈りと共に……。

 mi-saki ……それは、高位の天使だけが用いる “幸せ” を意味する言葉。

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