青葉千歳の軌跡

千歳

Illust. 竜徹

[ 2015.05.15 掲載 / 2016.11.11 更新 ]

プロフィール

Name 青葉 千歳 Chitose Aoba
Age 19
Birth 3.3
Zodiac 魚座
Size 149cm
Job 無職
Family 父, 母, 弟x2
World 緑の世界
Arrival 01, 03, ST, 05, 08, 09, 13, 15, 18
Partner 刀の武人 龍膽
Memo ・自称152cm。
・たびたび他世界の者から魂の強さを評価される。
・女性らしい格好は苦手だったが克服した。
・父親は自衛隊東北方面隊の幹部。
・緑の世界における「紅姫」の祖先。

略歴

00 宮城生まれ。
01 男所帯だったため、すっかり男勝りに育ってしまう。
02 中学入学後、ゆるやかに成長が止まる。高校入学直後の失恋で髪を切る。以降 “ちいさい” がNGワードとなる。
ブラックポイント発生。
03 緑の世界のブラックポイントから現れたゼクス(おもにプラセクト)に蹂躙され、変貌した景色に涙する。
04 困った人を助けたいという想いに駆られ、自衛隊東北方面隊へ入隊。剣淵相馬とは同期だが、辛うじて顔と名前を覚えている程度の関係。
05 専守防衛の在り方にしびれを切らせた千歳はカードデバイスを盗み出し、自衛隊東北方面隊からの脱走を目論見る。上官でもある父親に見つかってしまうが、父親は何も聞かずに拳骨1発をくらわせると、そのまま千歳を送り出した。
06 薔薇兜ワイルドローズに襲われていたウェアアントラーの子供を助けようとして、窮地に陥ったところを龍膽に救われる。龍膽は千歳の生き様に感銘を受け、パートナーとなる。
千歳19歳。ブラックポイント発生から3年経過(ブースターパック第1弾「異世界との邂逅」前後)。
07 ライカンスロープの里で、同じくゼクス使いとなった剣淵相馬と再会。
08 女性をさらう魔人サエウムと戦闘。力及ばず、相馬のパートナー・フィーユがさらわれる。幸いなことにフィーユは自力で戻ってきたが、やがて根無し草の相馬とともに旅立った。
H.S.2-4:敗北
09 侵攻してきた青の世界の軍勢を撃退したものの、敵である各務原あづみが発作に倒れたのを見て、すぐさまホウライの集落へ運ぶ。
H.S.1-5:勝利
10 八大龍王 徳叉迦から《モウギ》さえあれば、あづみの病気を完治できると聞かされ、あづみ&リゲルとともに高千穂へ旅立つ。旅立ちに際して龍膽が八大龍王 優鉢羅から《七星剣》を借り受け、二刀流へ。
11 青の世界からの刺客、オリジナルXIII Type.I “A-Z”と交戦。あづみと瓜ふたつの見た目に戸惑う。
12 口より先に手が出る性格が高じて、ゼクスにも通用する必殺拳《!!(バコン!)》を体得。
13 鳴門海峡を渡る際にあづみ&リゲルとはぐれる。
14 難破した先で弓弦羽ミサキに介抱されるが、行き違いから戦闘になる。
H.S.5-2:敗北
15 北九州でリゲルと合流。さらわれたあづみを巡り、九大英雄ジャンヌダルクたちと戦闘になる。
H.S.6-5:ミッション達成◎
16 高千穂に辿り着くもあづみの容態が急変。八大龍王 跋難陀から《モウギ》にあづみの病気を治癒する力がないことを知らされる。
17 自分たちを利用した徳叉迦に怒りを募らせた千歳と龍膽は、東北方面への帰還を決意。
18 あづみとリゲルが姿を消したことに気付く。数日間に及ぶ捜索の甲斐もなく、再会は叶わなかった。
徳叉迦の秘術により赤と緑の世界のブラックポイントが転換(ブースターパック第13弾「変革の疾風」前後)。
19 ブラックポイントの転換に巻き込まれて北海道へ。異変に気付き様子を見に来た優鉢羅と再会する。
20 周辺を伺うように飛び回る斥候プラセクトの存在に気付く。
21 北海道に出現した赤の世界のブラックポイントから、ギガンティック最強種《暁十天》が多数出現。龍膽や優鉢羅を率い、奇襲を受け劣勢に立たされていた魔王信長軍の助太刀に入る。しかし、力及ばず千歳をかばった龍膽もろとも暁十天の炎に巻かれ、気を失う。
H.S.8-5-2:敗北
神降臨(ブースターパック真神降臨編「神域との邂逅」前後)。
22 ほぼ無傷の状態で目を覚ます。優鉢羅から “飛び込んできた斥候プラセクトが代わりに焼かれた” との証言。状況を整理するため、3人でホウライの里へ戻ることにする。
23 道中、豪雨に見舞われ見知らぬ屋敷へ迷い込む。先客の相馬は切羽詰まった様子で脱出を促し、同行者の優鉢羅はいつの間にかいなくなっていた。先走った相馬が悲鳴とともに姿を消したことを受け、千歳と龍膽は仲間の救出と恐怖の屋敷の脱出を決意。
24 一時は龍膽ともはぐれ独りになったが、千歳は前向きな心を失わずに目的を完遂。ちなみに、相馬は落とし穴で気絶しているところを、優鉢羅は吊るし網で恥ずかしい姿になっていたところを、龍膽は足のつくプールで溺れていたところを救出された。
H.S.9-5:勝利
25 相馬たちとホウライの里へ到達。優八羅や娑迦羅、ウェアジャガーらとともに緑の世界を脅かす様々な敵への対策を協議するが、具体案は出ない。
26 シャマシュと交戦。
NF DramaCD 10「紅姫哀詩」
27 大地を揺るがす地鳴りがあり、直後に現れた緑の竜の巫女クシュルが邪竜ニーズホッグの出現を告げる。神と関わりその目的を知ったふたりは神に立ち向かう決意を固め、手始めに邪竜討伐を果たした。
H.S.10-3:勝利

旅立ちの物語

覇王の哀歌

 それは何の前触れもなく現れ、破壊と殺戮の限りを尽くした。
 人類繁栄の象徴だった主要都市は瞬く間に壊滅状態へ追いやられ、
 世界中から笑顔が消え去ってゆく。

 わずかに生き延びた人々は、
 異世界へ通ずる門《ブラックポイント》から無数に現れる異形たちを、
 こう呼んだ。

 Zillions of enemy X 《数えきれない正体不明の敵:ゼクス》と……。

 あまりに強大な力を持ったゼクスに対抗する術はなく、
 人類が滅亡へ向かう未来を、誰もが予感していた。

◆ ◆ ◆ ◆

 東北に発生したブラックポイントからほど近いところに住んでいた青葉千歳もまた、
 当たり前だった世界が、ある日突然自分たちに牙をむく姿を目の当たりにしてしまう。
 かけがえのないものが、壊され、亡くなっていく。
 ただ見ているだけで、何ひとつ出来ない無力さに涙を流した。

 あれから3年の歳月が流れ――

 誰かを助けられる人間になるため自衛隊に属した千歳は、日々鍛錬を積んでいた。
 そんな彼女が、入隊してからの1年間で痛感させられたことがある。
 首都・東京を失い統率力を失ったこの国に、在りし日の奪還など到底不可能ということ。
 自衛隊東北方面隊もまた、発生したブラックポイントから遠く離れた北海道まで撤退し、
 現状を維持することしか考えていない。

 上に立つ者たちの消極的なやり方に幻滅した千歳は、
 部隊に少数配備されていた《カードデバイス》を奪い、脱走した。
 ゼクスを捕獲・使役できる、不可思議な技術を用いたこのアイテムさえあれば、
 独力で未来を切り開けると考えたからだ。

◆ ◆ ◆ ◆

 千歳には知っておかなければならないことがあった。
 ずっと立ち入りを禁じられ、決して近づくことは出来なかったが、
 いまこの瞬間、彼女を縛るものは何もない。
 時たま見かけるゼクスから身を隠し、数日かけて深い森を抜けた先。
 千歳は周辺一帯を望める高台から「諸悪の根源」を見下ろした。

 眼下にすべてを飲み込む漆黒の空間が広がっている。
 事実、清く澄んだ水をたたえ子供の頃から千歳を見守ってきた十和田湖は見る影もない。
 3年前、ここから這い出してきた異形たちは、すべてを奪い去っていった。
 どこへ繋がっているのか、何の目的でやってきたのか、考えも及ばない。

 黒い。
 どこまでも黒い。

 あの日の恐怖が蘇る。
 たとえ1匹だけだとしても、力でかなう相手じゃない。
 そんなのが、この巨大な漆黒から無数に飛び出してきた。
 分かっていたはずだった。

 無理。
 ぜったいに無理。

 人間ひとりがどうにかできるレベルを超越している。
 深い絶望を前にして、必死で考えまいとしていたことを思い出してしまった。
 ……帰ろうかな。
 もうあの場所には何もなくなってしまったけれど、せめて最期は思い出と一緒に――

「……! ……!!」

 そんな折、どこかから誰かの声が聞こえた気がした。
 耳を澄ませてみると、自分が歩いてきた森の奥から微かな声が聞こえる。
 こんな場所に自分以外の人間がいるのだろうか?

 茂みに潜み様子をうかがっていると、やがて声の主がけたたましく駆けてきた。
 一見、鹿のようだが、違う。二足歩行の鹿などいやしない。
 あれはライカンスロープという種類のゼクスじゃないだろうか。
 聞いた話と比べて小柄なところを見ると、子供なのかもしれない。

 背中に大きな薔薇を咲かせた、巨大な赤いカブトムシのようなものに追われていた。
 あっちは植物と昆虫が融合したゼクス、プラセクトに違いない。
 自然界の摂理よろしく、彼らの間でも生きるための争いは起こるのだ。

 あの子供が殺され、少しでもゼクスが減るならそれに越したことはない。
 無視を決め込んだ千歳だったが、
 気がつけば足元に転がっていた小石を、思い切りプラセクトに投げつけていた。
 硬い装甲に阻まれ傷ひとつ与えられなかったが、気を引くことはできたようだ。
 きびすを返し、千歳が隠れている場所目掛けてプラセクトが飛来する。

「あー、もう! 何で先に手が出ちゃうかなぁ… あたしは」

 身の安全を確保してから行動に移せばいいものを……。
 愚痴りながらも、千歳の胸に後悔の気持ちなど微塵もなかった。
 どんな姿をしていようと、誰かを助けるために生きていこうと決めたのだから。

 茂みから姿を現した千歳は、弱気になった自分が立ち直るきっかけを与えてくれた
 ライカンスロープの子供が逃げ去った方向へ感謝の敬礼をすると、
 空を切り裂き向かってくるプラセクトへカードデバイスを差し出した。
 だがしかし、硬質で冷たいデバイスは何の変化も示さない。
 当然、プラセクトが怯む様子もない。

「……さすがに都合良く使えたりしないか」

 きっとあのツノに貫かれたら死ぬよね。
 避けれるかな。
 伏せれば間に合うかな。
 いや、あいつ速い。
 もう間に合わないって。
 あー……終わったかも、あたし。

 うっすらと死を覚悟したその時――

「命を護れる者が、生きることを諦めるのか?」

 頭上からの野太い声の後、千歳とプラセクトの間に何者かが立ちはだかった。
 精悍な風体の男が横に構えた刀は鋭いツノを正面から受け止め、火花を散らす。
 衝突の瞬間、プラセクトの背中から輝く粉状の何かが飛散した。

「吸い込んではならぬ!」

 しかし、行動が遅れた千歳は直後、強烈な睡魔に襲われることとなった。
 全身から力が抜けてしまい、ふらふらと背後の木にもたれながら、ようやく理解する。
 たったいま、ふたりの脇を高速ですり抜けて行ったプラセクトの花粉は、催眠毒だったのだ。
 この男が現れなければ、仮にプラセクトの突進を避けられたとしても毒で意識を失い、
 確実にトドメを刺されていただろう。

 千歳の窮地を救った男もまた、異形の様相を呈していた。
 ぼんやりした視界でもはっきりと分かる、燃えるような赤い髪の間から覗いた2本の角。
 詳しくは分からないが、彼もまたある種のゼクスであることに間違いはないだろう。

「うぅ……ん……」
「何故、異形を助けた?」

 武人のようないでたちのゼクスは振り返ると、千歳を見下ろしながら険しい表情を向けた。
 着物の上に重ねた武者鎧がカチャリと音を立てる。
 半ば放心状態だった彼女はその無機質な音で我に返った。
 両手で頬を叩いて活を入れると、千歳は目の前のゼクスに臆することなく言い捨てる。

「誰であろうと、困っている人は見捨てられない!」

 抗いようのない位置関係にむっとした千歳は、さりげなく背伸びすることも忘れなかった。

「不器用なのだな」
「ほっといてよ」
「だが、真っ直ぐだ」

 ほんの一瞬だけ口元を緩ませ、
 武人のようなゼクスは千歳の頭に武骨な手を置くと、乱暴に髪をかき回した。

「…………! おいこら頭なでるな! あと見下ろすな!
 それからっ! その! あっ、ありがとう…………」

 訴えを無視し、千歳を制するように後ろへ回った彼は、今度は縦に刀を構える。
 やがて、森の奥からまたあの音が聞こえてきた。
 風を切り裂く羽音。
 プラセクトが戻ってきたのだ。

「我が名は龍膽。拙者、その志を徹す刃とならん!」
「ココロザシ……? テッス……?」
「人間風に言えば、よろしくということだ」
「よ、よろっ……ええええ!?」

 ゼクスを守ろうとした千歳、
 そして、千歳を守るために剣を振るおうと決意する龍膽。
 いま、この時から、ふたりの戦いは始まった。

ゼクス・ゼロ 我武者羅の交響曲 <がむしゃらのシンフォニー> 了

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